在職老齢年金の仕組み②

「在職老齢年金」は収入が多いと、本来受け取れる年金が「支給停止」あるいは「減額」されてしまうのが特徴です。

そのとき「支給停止」あるいは「減額」された年金は“二度と戻って来ない年金”になります。

これまでずっと高額な保険料を払うだけ払って、いざ年金を受け取ろうとしたら、収入があるから受け取れない。これが「在職老齢年金」という制度です。

その成り立ちはともかくとして、支給停止や減額になった年金が二度と戻って来ない理由はズバリ、「年金の財源」がないからです。

社会保障審議会年金部会によると、「在職老齢年金」で支給停止になっているのは60~64歳で対象者は約67万人・支給停止額は約4,800億円、65歳以上で対象者は約41万人・支給停止額は4,100億円と報告されています。

【参考】 「在職老齢年金の見直し」 第11回社会保障審議会年金部会2019.10.9
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000555792.pdf

ここで重要なのは、支給停止額は「年金の財源」として“没収”されているということです。

そのため「在職老齢年金」を廃止すれば、支給停止額8,900億円もの財源が失われることになるわけです。
逆にいうと、我が国の年金制度はこのようなインチキの上に成り立っているともいえます

在職老齢年金の支給停止基準

「在職老齢年金」は年金月額と報酬月額の合計額が48万円を超える場合、48万円を超えた金額の半分が年金額より支給停止されます。

60歳代といえば、まだまだ現役で活躍している社長が大勢います。それゆえ、「在職老齢年金」が“全額支給停止”になっているケースが多々あるのです。

厚生年金は70歳までが加入対象です。よって、社長の保険料負担も70歳までになります。

しかし、「在職老齢年金」は年齢に上限はなく、社長が75歳になっても、80歳になっても、報酬を受け取っている限り、年金の一部あるいは全額が支給停止され続ける“年金没収制度”です。

60代社長の多くは年金が1円も受給できない“全額支給停止”になっている。

では、そのことで社長はどれだけの額の年金をもらい損ねているのか。以下は平成15年4月以後に厚生年金に加入した人の平均標準報酬額別・老齢厚生年金の受給額(目安)になります。

 

年金月額と報酬月額

「在職老齢年金」を計算する際、「年金月額」「報酬月額」という用語の理解がポイントになります。ここでいう「年金月額」とは【老齢厚生年金の年額を12で割った額】(加給年金は除く)のことです。老齢基礎年金は「在職老齢年金」の支給調整の対象外ですから、社長の報酬月額がどれだけ高額でも受給額が減額されることはありません。(※令和5年度の満額受給額は年額795,000円)

一方、「報酬月額」とは厳密には「総報酬月額相当額」のことをいいます。「総報酬月額相当額」とは【毎月の標準報酬月額(役員報酬)と直近1年間の標準賞与額(役員賞与)を12で割った額を足した額】のことです。標準報酬月額とは社会保険料の算定基礎になるもので、報酬月額を「保険料額表」の1~32等級(健康保険は1~50等級)に分け、その等級に該当する金額をいいます。

厚生年金の標準報酬月額上限は65万円(32等級)です。よって、報酬月額(役員報酬)が標準報酬月額上限65万円以上になっている社長も多いことでしょう。当然、その場合は年金月額と報酬月額の合計額が47万円を超えるので、「在職老齢年金」は“支給停止”の対象になります。

なお、「総報酬月額相当額」の計算は会社が年金事務所に提出する『報酬月額算定基礎届』『報酬月額変更届』『賞与支払届』等に基づき自動的に計算されます。ということは、つまり、「在職老齢年金」についても自動的に年金額の一部または全部が支給停止になる、ということです。

 

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