70歳まで雇用継続が義務付けられる今こそ、退職金制度を再検討できる最後のチャンス!

今時点の自社の退職金の債務はいくらあるのか?(退職債務診断はしておく)

2021年4月に改正施行された高年齢者雇用安定法により、従業員を65歳から70歳まで継続して雇用する努力義務が課せられました。

従業員の生涯賃金について注目すると、例えば年収の1.0倍~1.5倍に相当する60歳時の退職金を受け取った場合と、退職金なしで65歳から70歳まで働き続けた場合とを比較すると、後者の方が生涯賃金が高くなることが明らかです。

再就職となった場合、再雇用時の賃金は30%から40%程度の減少になりますが、年金の繰り上げ請求や法定福利費を抑制することで、従業員個人の手取りは毎月2万円、年間24万円の増加となります。この新しい賃金提案は有効であり、会社側も年間175万円程度のコスト削減が見込めます。

退職金制度の改編には妥当な理由が必要です。しかし、現在の制度を廃止する場合には、法改正に従って、雇用継続のための原資を70歳まで維持するために使用し、必要に応じて、勤続手当(月額5千円など)のような代替措置も提供することができます。

退職金制度というのは、法律で決まっているものではありません。しかし、経営状況が比較的良好なときに退職金制度を導入している場合が多いです。ただし、それにはリスクが伴います。良い経営を続けられる限り、現在の退職金制度を維持することは可能ですが、毎年、従業員たちの退職給付債務が増えることになってしまいます。

退職金は労働者の権利として、賃金の一部とされています。裁判所においてもそのように解釈されており、例えば月給が35万円であったとしても、月給32万円にして3万円を退職金とすることは法的に認められません。もし、退職金不払いで訴訟が起こされた場合、全敗となってしまいます。また、過去の退職金の支払い額を引き下げたり、支払いをしなかったりすることもできないことになります。

以前は、採用募集に「退職金制度有り」という文言を掲載することで、応募者数の向上が期待でき、在籍社員も退職金制度があることで、定年まで勤務に尽力することが想定されていました。

しかしながら、25歳で入社した場合、退職金は35年後になるため、日常的にそれを意識して勤務している社員は、定年の直前を除いては存在しないでしょう。さらに、35年後の退職金支払いは誰も保証することができません。会社が存在しているかどうかもわかりませんから。

退職手当制度の廃止または改正は、労働者に不利益をもたらす変更にあたりますが、本人の同意があるか、あるいは客観的で合理的な理由がある場合に限り、実施することができます。

70歳までの雇用継続については、会社の都合ではなく、新しい高齢者の雇用を促進する改正された雇用安定法に基づいて実施されます。現行の退職積立金は今後70歳まで働くための資金として使用される予定であり、合理的かつ客観的な理由に基づく措置です。

会社の経営が厳しい場合、従業員には将来もらえるか分からない退職金を今受け取ることができる重要なメリットがあります。同時に、会社側にとっても、支払える範囲内で退職金をすぐに支払い、退職金制度を廃止する決断をする場合があります。

退職金制度を改革し、以前の退職金を支払いに回す会社が最近多くなりました。その代わり、一律月5千円の勤続手当を支給することで、社員のモチベーション向上を目指す会社もあります。勤続手当には、社会保険料や残業単価の上昇も含まれますが、将来的な退職給付責任を負わなくなるため、会社側の退職金リスクが消滅します。

中退共と独自の退職金制度が存在する場合においては、以下のような方法によって解決策を導入することができます。

  1. 中退共を解約し、一時所得として処理します。この場合、所得税・住民税は若干増加しますが、社会保険料はかからなくなります。
  2. 現行の退職金制度において、今後の積み増しをやめ、令和○年○月末日までの退職金を確定し、退職時に支払う退職金制度に就業規則の退職金規定を変更します。
  3. 状況に応じて、勤続手当5千円を毎月支給する代替措置を導入します。この場合、社会保険料や残業単価が若干高くなることがあります。しかしながら、勤続手当の金額は高く設定することはできず、一旦高額を提示した場合には下げることが不利益変更になるため、客観的かつ合理的な理由に基づいた金額設定が必要です。

①から③に掛けての策を導入することにより、退職給付債務は確定退職金制度によって固定化され、増加することはありません。また、定年退職者が発生するたびに、退職給付債務は減少していくこととなります。

退職後に支払う退職金を複数回に分けて支払う場合、公的年金等の税額控除(年金以外の所得が1000万円以下である65歳未満の場合、年金が130万円以下の場合は60万円、65歳以上の場合は年金が330万円以下の場合は110万円)を行った後に支払われた退職金については、雑所得とされ、給与所得などと総合的に課税されます。社会保険料はかからず、従業員との退職金分割払の確認書などが必要になります。

退職金制度が廃止された場合、在籍従業員に対する退職金の一括支払額には、社会保険料はかかりませんが、所得税や住民税がかかることになります。この場合、退職するわけではなく、給与所得として支払われるため、退職所得控除は適用されません。

例えば、ある会社では、100人以上の人員整理に伴い13億円の退職金を払うのに、234か月に分けて月々支払いする方法を採用し、退職金制度を廃止しました。

もしも会社が退職金を全額または一部支払えない場合、従業員が損害賠償を役員に請求することができます。この権利には「消滅時効」という期限があり、最高裁判所の昭和49年12月17日の判決により、この期限は10年と定められています。このため、10年前の役員にも責任が及ぶ可能性があることに注意してください。

もしも役員の方が退職された後の10年以内にお亡くなりになった場合、未払いの退職金の損害賠償額は、法定相続人それぞれが法定相続分をもって負債を相続することになります。

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